コラーゲンの歴史

コラーゲンの歴史と言えば、コラーゲンが生命の起源とも考えられることからすれば数十億年の歴史がありますが、ここでは人間がコラーゲンを利用してきた歴史について解説いたします。

皮革への利用

紀元前3000年頃に、ある種の木の樹皮の汁に動物の皮を浸けると腐食しにくくなり柔らかくなることが発見されました。

これは、いわゆる「なめす」という方法で、樹皮に含まれる「タンニン」が皮に含まれる「コラーゲン」を非常に安定させる作用があるためです。

皮革に含まれるコラーゲンを安定させて、様々なものに利用できるようになったことは革新的だったのです。

接着剤としての利用

皮革への利用と同じころの5000年以上前から、動物の皮や骨などを水とともに熱してできる「膠(にかわ)」が「接着剤」として利用されるようになりました。

膠の純度を高めたものが「ゼラチン」です。

古代エジプトの壁画には膠の製造過程が描かれ、ツタンカーメンの墓からは膠を使った家具や宝石箱も出土しています。

中国では、西暦300年頃の魏(ぎ)の時代にススと膠液を練った「墨」が作られたとされています。

そして、日本に膠が伝わったのは推古天皇の時代で、「膠墨」としてもたらされたことが「日本書紀」などの記述から読み取られています。

その後、日本画の絵の具に混ぜて利用されたり、マッチの頭の火薬を固めたり、修理の時には温めるとはがせることから、バイオリンのような木製楽器や木製の家具の接着剤として使われています。

生薬としての利用

「阿膠(あきょう)」と呼ばれる生薬は、ロバの皮を水で加熱抽出して作られる膠のことで、約2500年前に書かれた中国最古の医学書「五十二病方」に記載があります。

その効能は、生理痛の緩和、月経不順、子宮の不正大量出血や、出産後の滋養や抜け毛の改善、便通の改善、骨粗鬆症予防、肌荒れ・乾燥の防止、新陳代謝の促進などの美容効果があるとされています。

現在では、美肌・美白についての研究がされているとのことです。

食材としての利用

食材としての利用は案外遅く、日本へも明治時代以降に欧米の食文化の到来とともにゼラチンが知られることににりました。

しかし、日本では既に寒天や葛粉など多糖類系統のゲル化剤が普及していたため、1935年ごろに食品にできるだけの純度に精製する技術が確立した後にようやく食品用ゼラチンが普及することとなったのです。

そして、近年になってゼラチンを酵素によって低分子化する技術が開発されたことにより、「コラーゲンペプチド」として広がり、コラーゲンのサプリメントやドリンクが市場に溢れるようになりました。

フィルムや印画紙への利用

1871年に「写真乳剤」が開発され、それを塗布し乾燥させ感光膜とした臭化銀ゼラチン乾板が発明されました。

最近になってカメラのデジタル化が普及するまでは、長い間、写真にゼラチンは欠かせないものだったのです。

ご存知のフジフィルムは、フィルムで長年積み重ねてきたゼラチンの技術をサプリメントや化粧品に活かして存続しています。

医薬品への利用

コラーゲン(ゼラチン)は、医薬品などにも様々な用途で利用されています。

飲み薬に使用されている各種のカプセルのや錠剤やトローチなどの賦形剤としてや、流動性を高めたゼラチンで嚥下障害のある患者への水分補給などや、湿布薬にもゼラチンが利用されています。

また、手術時の止血用のゼラチンスポンジやゼラチン加水分解物を止血剤として注射したり、再生医療などにも利用されています。

化粧品への利用

コラーゲンは、粘性保持のための添加剤としてシャンプーやリンス、口紅などに使用されていますが、コラーゲンの保湿効果にも着目され様々な化粧品に利用されています。