
コラーゲン分子は、3本のアミノ酸の鎖(くさり)が、らせん状に絡まってできた線維状のタンパク質だということは「コラーゲンとは?」で説明しました。
そして、線維状のタンパク質であるコラーゲン分子がさらに多く集まって「コラーゲン繊維(線維)」を形成して皮膚や骨などを形作る大きな役割を担っているわけです。
さて、コラーゲンの変性とはコラーゲン分子のらせん状に絡まった3本のアミノ酸鎖がほどけることで、「ゼラチン」になることを指します。
コラーゲンが変性してゼラチンとなることは、細胞の環境温度によって決まります。
簡単に言うと、コラーゲンの変性温度とはコラーゲンがゼラチンになる温度のことです。
様々な動物がコラーゲンによって体を形作っているわけですが、その種類によってコラーゲンの変性温度が違います。
ヒトや牛や豚などの動物性コラーゲンの変性温度は約40℃~60℃くらいですが、魚などの海洋性コラーゲンの変性温度は数℃~20度前後となっており、その要因はコラーゲン特有のアミノ酸である「ビトロキシプロリン」の含有率によるものと考えられています。
変性温度と消化吸収
「コラーゲンの効果」の「コラーゲンの補給」で解説していますが、コラーゲンサプリメントの広告では、正しい情報から都合よく勘違いを誘導することがよく見られます。
実は「コラーゲンの変性温度」も正しい情報から勘違いを誘導することに良く利用されています。
それが「消化吸収」なのです。
コラーゲンは消化されにくい
動物の体に存在する状態でのコラーゲンはヒトの消化酵素では消化しにくいのです。
牛肉の刺身を食べたとして、その肉に含まれるコラーゲンはほとんど消化されません。
しかし、焼いたり炒めたりして加熱すると、コラーゲンは変性してゼラチンとなり消化できるようになります。
3本のアミノ酸鎖が絡まった状態では消化しにくく、ほどけると消化できるのです。
魚由来の方が良い?
前記は動物性コラーゲンについてですが、魚などの海洋性コラーゲンは変性温度が人間の体温より低い場合がほとんどです。
ですから、魚の刺身を食べると魚のコラーゲンは体内でゼラチンとなり消化吸収されます。
ということで「魚由来のコラーゲンサプリメントの方が吸収に優れている。」となるわけなんですね・・・
そして「コラーゲンは魚由来が良い!」と、高単価な商品が売れるのです。
コラーゲンはコラーゲンペプチド
ここで確認したいのは、コラーゲンサプリメントで利用されているのは「コラーゲンペプチド」だということです。
「コラーゲンペプチドとは?」で解説していますが、ドリンクやタブレットやゼリーなどに加工するには、水によく溶けて熱したり冷やしたりしても性質の変わらないコラーゲンペプチドが便利だからです。
コラーゲンペプチドとは、コラーゲンが変性したゼラチンを酵素分解して低分子化したものですから、変性した後なんですね・・・???
もうおわかりでしょうが、コラーゲンペプチドが原料のコラーゲンサプリメントでは変性温度はあまり関係ないわけです。
全部アミノ酸ならコラーゲンである必要ある?
これも「コラーゲンの効果」で解説していますが、コラーゲンが効率よく消化されて、そのほとんどがアミノ酸として吸収されるのであれば、肉や魚のタンパク質でもいいわけですよね。
いくつかのアミノ酸が繋がった「ペプチド」や、いくつかの単糖が繋がった「オリゴ糖」が腸管から血中に吸収されることは以前からわかっています。
また、限定的な効果を謳える「特定保健用食品」で効果の成分とされているものに、何種類かのペプチドやオリゴ糖があります。
コラーゲンでもそのペプチドに何らかの作用があるのではないかという研究がされていますから、消化吸収性が良い(ほとんどがアミノ酸に分解される)から良いサプリメントだとは言えないと、私は考えています。
しかし、多くの方が勘違いが横行しているのです…。
と、ある意味