2017年11月1日の日本経済新聞Web版での報道です。
早稲田大学の小出隆規教授らは、バイオ研究や医療などに使えるコラーゲンに似た人工素材を開発した。アミノ酸をつないだ鎖を3本束ね、それらを網目状に組み合わせてゲルなどに加工する。分子構造を変えることで用途に合わせた機能を発揮できる。再生医療などに使う細胞を培養する際の足場のほか、傷の治りを早くする医療用素材として有望とみている。医療用素材としては1~2年後に臨床試験(治験)を始める計画だ。
既に、2011年ごろにはコラーゲンの主要アミノ酸である「プロリン」「ヒドリキシプロリン」「グリシン」から人工的に三重らせん構造を作りコラーゲン様のたんぱく質は作られていました。
需要の元は再生医療用の細胞を培養する際の足場や傷の治りを早くする医療用素材で、動物性コラーゲンからアレルギーなどの原因となる抗原性を誘起する分子を除去したものが現在でも主流です。
しかし、このような医療用コラーゲンは自家表皮移植が必要であったり、表皮再来能力が無かったりと用途は限られています。
そこで、人工コラーゲンの研究が継続されてきたわけですが、既存の人工コラーゲンは医療用として利用されるスペックはありませんでした。
今回のリリースでは、アミノ酸鎖の両端に「システイン」というアミノ酸を付加し、システイン同士が結びついてゲルなどの素材に加工できるにしたということです。
また、人工コラーゲンのアミノ酸鎖を構成するアミノ酸分子の種類は自由に変えられ、欲しい性質を設計することができ、両端のシステインの数によってゲルの硬さを変えられるということです。
この人工コラーゲンのゲルを使って細胞を培養しても天然コラーゲンとの差はなく、さらに人工コラーゲンを構成するアミノ酸分子の種類やゲルの硬さを変えることで、狙った細胞の培養に必要な培地などを作れるとのこと。
今後は、iPS細胞のような多分化能幹細胞の研究が進んだことに併せて、人工角膜や網膜の治療などの医療面で応用が期待されています。
私の懇意にしている知人は、網膜色素変性症という難病で長年視覚障害で葛藤していますが、iPS細胞と人工コラーゲンによって、早く治療可能となることを願っています。